奥州・平泉にある藤原家の屋敷・高館。
その高館の囲炉裏囲んで、男二人が座って何かを話している。
見る人から見れば普通に話しているように見えるが・・・。


「・・・有川に、敦盛くん?」


男二人がびくりと肩を震わす。武士である彼らがそんな行動を取るのは珍しい。
・・・まぁ、それも無理は無い。声をかけたのは、『応龍の化身』であるである。
彼女は周囲の気配と同化することが出来てしまうのだ。無意識の内に。


「・・・っ・・・・・・お前なぁ・・・」
、殿・・・」
「ありゃ。ごめんー。驚かすつもりは無かったんだよー?」


えへら、と気の抜けた笑いを浮かべれば、二人ははぁー、と息を吐く。
随分と気を張っていたらしい。


「・・・で。何の話?」
「お前には関係無いって。気にすんな」
「これは、我々の問題、ですから」


と、二人に拒絶されればむぅ、と口を尖らせて拗ねる
しかし、何かを思い立ったのか。目を輝かせ、にまりと笑う。
その表情に、男二人は嫌な予感を感じたのか、顔を引きつらせる。


「何、考えたんだよ?」
「んっふっふー。ボク、分かっちゃった!」
「一体・・・何を?」
「銀さんの事でしょ」


ボクに隠し事は無理だよ〜。と意気揚揚としている少女に、男たちは溜息を尽きざるをえない。
本当にこの少女には隠し事は出来ないのである。


「・・・殿は、どう思われますか?」
「ボク?・・・ううん・・・平家の事情は知らないから、何とも言い難いんだけどさぁ・・・
 あの人じゃぁ無いのは確かでしょ?望美が思ってる人ではない。・・・・そうだね?」
「・・・・・・・」
「・・・ありゃ?無言なの?酷いなぁ・・・」


将臣は顔を歪め、顎に手を当て苦悩している風に見え、そして敦盛は俯いている。
その顔はおそらく将臣と同じく苦悩で歪んでいるのだろう。


「・・・あのさ。とっても言い難いんだけど。言っておかないといけない気がするから・・・さ。
 あいつ・・・知盛は、もうこの世には居ないよ。ボクらが逃げている最中に、気配が消えた、から」


ごめんね。と悲しそうに少女が微笑む。


「いや・・・サンキュな」
「私からも、言わせて下さい。有難う御座います、殿。
 ・・・これで、銀殿が何者か、確信出来ましたから」
「・・・ん。役にたったみたいで良かった。
 んで、結局の所、銀さんって誰なの?」


知盛に気配が似てるんですけど?と嫌そうな顔を少女が隠しもせずに見せれば、男二人は顔を見合わせ頷く。


「彼は知盛殿の弟君、重衡殿です」
「しげひら?」
「ああ、一谷の戦で行方不明になったんだ」
「・・・・・・・ぁ」


敦盛の言葉にきょとんと首を傾げるだったが、将臣の言葉で何かを思い出したのか、嫌そうな顔に変わる。


「何か知ってるのか?」
「うー。うーん。
 ・・・知らない、って言っても、いい?」
「・・・言い難いのであれば。しかし・・・」
「・・・聞きたい、よねぇ?」
「悪ぃ・・・教えてくれ」


うー。と本当に言い難そうに視線を泳がせ、どうしようかと悩んでいる
彼女の動向を見つめる将臣と敦盛。
腹を括ったのか。は視線を二人に戻し、重い口を開く。


「一谷の戦で、ボクは・・・・・・景時さんと一緒に、居た。
 ・・・で、戦の後に政子様に報告に行ったんだ。
 その時、に、」
「見たのか!?」


食いつく将臣にふるふると首を横に振る。


「んん。見てないよ。ただ・・・感じただけ。
 気には・・・なったんだ。でも、政子様に聞いても答えてくれないしさ」


あの人は嫌いなんだよ・・・。と本当に嫌そうに顔をしかめる。


「…では、重衡殿は其の時既に?」
「うん。捕まっていたんだと思う」
「で、その後は?」
「多分、政子様と一緒に鎌倉に連れてかれたんだと・・・」


詳しくは・・・、と言葉を濁らす。そしてしゅんと俯いてしまう。
そんな彼女の頭をわしゃわしゃと振る様に撫でる将臣。


「ぎゃぁっ!?や、やめてよー!!」
「お前に辛気臭い顔なんて似合わないんだよ」
「そうですよ。殿は笑っていた方がいい」


獣の様に将臣に威嚇をしてから手を振り払ったに、敦盛はくすくすと声を漏らし笑いながら語りかける。
珍しい敦盛の顔に、は少し驚き、次の瞬間ぱぁ、とまんべんの笑みを返す。


「ありがと!敦盛くん。・・・有川にも一応、お礼言っとく」
「い、いえ・・・私は・・・」
「いーから。敦盛は謙虚すぎるんだよ。もっとどーんと構えとけよ」
「でも、有川みたいにはならないでね?」


有川は悪い見本。と言いたい放題言うに、将臣はヘッドロックを仕掛けた。


「お前はその口を直したほうがいいんじゃねーのか?」
「ぎゃん!いじめだ!横暴だぁーっ!痛い、痛いっ!」
「ま、将臣殿!」


未だを離さない将臣。将臣の腕の中でじたばたと暴れる。それをおろおろしながら右往左往している敦盛。
こんな変な行動は、九朗と弁慶が帰ってくるまで続いた。

・・・この光景に、もちろん九朗は激怒したのは言うまでもない。






***********

と将臣と敦盛の会話。
望美は初め、銀のことを知盛だと勘違いしてましたよね?
でも、将臣と敦盛は知盛ではなく、重衡だと思っていた・・・。
しかし銀本人は自分たちの事をわかっていない・・・。
そんな感じで実際は違うんじゃないかとか、いろいろ言ってる時に来たのが
彼女は人の気配を明確に感じ取れる子なので、あまり関わらせたくなかったー、みたいな?
まぁ、こんなご大層なことを書いてますが、行き当たりばったりなんで(苦笑)



2006.4.26 刹霞






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