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京の花霞〜龍、覚醒 ふんわりと、控えめに香るのは庭に咲く白く小さな花。 名前はきっと誰も知らない。 でも確かに存在している小さな花。 その香りに誘われて、小さな龍が目を醒ます。 もぞ、と布団から起きあがる。枕が明後日の方向に転がっているのはいつものこと。さして気にもせずに、元の位置に戻す。 (……?) 屋敷が慌ただしい。 普段はひんやりしている気配が、今はどうだ? あたたかな気配で包まれているではないか。 (流石は神子) そう考えて、首を傾げる。 「……みこ?」 頭に思い浮かんだ言葉。 しかし、自分の中にそんな言葉が存在していただろうか? 巫女ならわかる。神社に居る。 でも、神子は… 「神の子?……」 神に愛された子?神に守られた子? ぐぅ。(お腹が鳴った) …どっちも同じようなものか。 考えるのを放棄して、とりあえずは腹を満たすために、台所へと向かう。 「あら、様。気づかれましたか」 「ん。…ごはん」 はいはい、と苦笑しつつも手際よく雑炊やら何やらを碗に盛りつける。 彼女はわりと若いが、梶原に使える下働きの女をまとめる人。 この人には景時も(家のことに関しては)逆らえない。 京邸での母と言ったところか(それを言うとしばらく口を利いてもらえなくなる) 「あまり無茶をなさらないでくださいね?みなさまたいそう心配なさっておりましたよ」 「……ん」 「はい、こぼさずに食べてくださいね」 「…がんばる」 彼女はまた忙しそうに動き出した。 は台所と部屋をつなぐ段差に座り、食事をしだした。 普通であればこんなことはありえないのだが、は変わり者だと下の者等には思われているので問題はない(散々注意されても一向に直らないのであきらめられたともいう) 「…ね、朔ちゃんとかは?」 「朔様は神子様がたとお出かけになられましたよ。…ほら!こぼしてますよ」 「ぅ。…みこさま?」 「ほら、こちらにも…。なんでも朔様の対にあたる方だそうで。あの怨霊を封じることが出来るそうですよ」 「“こくりゅ”の対。…うぅ〜、いたいよー」 「こぼすのが悪いのです!」 口の周りを乱暴に拭かれ、はいやいやと首を振る。 そんな二人の姿はまるで親子のよう(そういうとやっぱり怒る) 「まったく…様はいつまでたっても子供ですわね」 「むー…」 食事を終えた後、そのまま出かけようとしたの首根っこをひっつかまえて普段着に着替えさせた彼女がそうつぶやいた。 自身、そういうつもりはないのだが、どうも皆には『手の掛かる子供』と認識されている。 本当の彼女は二十才である。 この世界に飛ばされたのは三年ほど前。 本来は十七才。それに三年を足せば二十。 しかしが『応龍の化身』ゆえに、年を重ねることはない。 『応龍』や『四神』などの『神』あるいは『信仰』を集めるものは、人の理から外れる。 だからこそ神々しく、不変不滅で、人々に崇められ、恐れられる。 「はい、出来ましたわよ」 「ん、ありがとー。いってきますー」 「あ、どちらに向かわれるのですか?」 ててー、と走り出したに投げかける。 角を曲がる辺りでぴた、と止まり、首を傾げて口を開いた。 「神子と龍、あとは…桜」 「はい?」 へら、と笑い、姿が消えた。 不可解な物言いに慣れたとはいえ、解読にはまだまだ時間が足りないと感じた女であった。 2009,03,22 UP 刹霞 戻る |