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すーはー、と深呼吸。 …うん、もう大丈夫。 「べんけ、」 くいくいと弁慶の黒い衣を引けば、優しい顔でボクを見る。 「落ち着きましたか?」 「ん、ごめんね?びっくりしたでしょ」 柔らかく首を横に振る。 「まぁ、少し驚きましたが…も人の子ですから」 弁慶はそう言ってにこ、と笑う。 ボクは少しだけ顔をしかめる。弁慶にバレない程度に、本当に少し。 人の子ではあるけど、生まれた世界は違う。 人の子ではあるけど、人ならざる力を持っている。 …そんな自分を“人間”のカテゴリーに入れてもいいのだろうか? 応、否、どちらとも言えない。 それなら考えるのは…やめよう。 答えなんて出やしない。 ボクはどんなになってもボクなんだから。 「なんか、今までが人じゃないようないーかたー」 にま、と意地悪そうに笑ってみせる。 弁慶は困った顔をして見せた。 「そんなつもりで言った訳じゃ無いですよ? しかし、そう聞こえてしまったなら謝ります、すみません」 「んーん、平気」 冗談だよー?と普通に笑えば、弁慶も笑う。 …端から見ると怖い会話なのかも知れない。ほらあれだ、 狸と狐の化かし合い。 …どっちが狸だろう?ボクは狸嫌かもー。 そんなくだらない事を考えてたら、弁慶が兵に呼ばれた。九朗の代わりらしい。 ひょこ、と椅子から降りて彼らの後をついていく。 弁慶も兵士も苦笑しているが、咎めることはしなかった。九朗だったら絶対怒るのにね。 話を要約すると、 『木曽軍全滅』 『木曽軍に修羅がいた』 『平家が怨霊をつれてきた』 『朔ちゃん行方不明』 だそうだ。 平家の方には、怨霊を調伏出来る時さんが向かい、九朗は散らばった源氏の兵を集めなが らこちらに向かってきているらしい。 「なら、ボクは朔ちゃん捜してくる」 「駄目です」 はーいと手を挙げ提案する。 しかし考えるふりもなく却下をくらう。 ぶ、と誰かが吹き出した。…失礼な。 「人捜すの得意だよー?」 「迷わず僕や九朗、景時の所に帰ってこれますか?」 「…む、」 気配を捜せば辿り着けない事もない。 でもそれはとても疲れる。ましてや陰の気が溜まる戦場だと、必要以上に疲れる。 さらに迷子体質らしく、気付くと居ない事が多いと言われた。 自分が気になったモノを追いかけてしまう癖のせいらしい。 なので、約束の時間はよっぽどの事じゃない限り守らない。 決して方向音痴な訳ではない(しかしほとんどの人は方向音痴だと言う) 「む〜〜」 「駄目ですよ?僕と一緒に来て下さい」 絶対帰ってくる、と言えないのを知ってか知らずか、弁慶はさっさと決を下して兵たちに伝えた。 こうなったら従わずにはいられない。 九朗が居ない今、最高責任者は彼なのだから。 (弁慶と一緒にいて正解だぁ…) 彼に横抱きにされ、肩に顔を埋めながらは思った。 陰の気の強さに少女は耐えきれず、歩けなくなってしまったのだ。 陰の気がどんなに強くても、普段ならこのような事態にはならない。 (朔ちゃん、居ないからかな…) 黒龍の神子が居なくなっただけでこの状態。 化身たる自分が何というざまか。 少女にしては珍しく自嘲の笑みを漏らす。 「…、辛いですか?」 息遣いを感じたのか、弁慶が少し首をこちらに向ける。 声も出せない状況なので、ふる、と首を横に振る。 …うまく振れていたかはわからないが、彼には伝わったらしく抱く力を強くする。 「寝て下さい、まだ暫くかかりますから」 言葉に甘え、小さく頷き瞳を閉じた。 …どこだろ、ここ。 自分が初めに居た場所じゃないのは確か。 暖かくて、心地良い。 でも、 悲しくて、辛い。 ざぁっ、と荒い川のように誰かの記憶が流れ出す。 どうして…!この手を離したくないと思ってしまうんだ…っ! 最後に、あなたの顔を見れて、、僕は、幸せ者です、ね。 オレも…守りたいよ。キミの事。
お前が俺の…敵、なのか…? オレは…どれか一つ、なんて選べない。 お願いだ…私を…浄化して、くれ、 帰って、帰ってきて、、!こくりゅうッ! みんなを…守る為に! …それが、あなたの願いだね? 白き龍の神子、あなたの。 (叶えるよ) それはボクの願いでもあるから。 2006,11,22 刹霞 戻る |